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<ヒグマに関する注意事項>・・・不要なトラブルを避けるために
ヒグマ

北海道の山野には多くの野生のヒグマが棲息しています。最近の北海道の調査や研究者の推計でも、また個人的な経験からでも、近年はその棲息数が増加傾向にあり、その行動範囲も人間の生活圏と近接・重複しつつあります。北海道環境生活部環境局が平成27年に発表した最新のヒグマの生息数の推計では、平成24年現在で、多ければ1600頭のヒグマが北海道に棲息しており、ここ20数年間で約1.8倍に増加したと報告されています。人里離れた山奥はもちろん、近年は、畑や民家が点在し、それなりの交通量がある国道のすぐ近くでも、また時には、札幌市内の山地に接したエリアの住宅地でさえも目撃例が報告されています。
 ガイドの際にはヒグマに対して常に細心の注意を払い、万が一、ヒグマが出没した際には、お客様に対して安全確保・危険回避についての必要な指示をいたします。現地でのガイドの指示には必ず従って下さい。また、ガイドは常に「スズ」を身に着け、万が一の遭遇ために「クマ避けスプレー」も常時携帯しております。個人的には、これまでにヒグマがすぐ近くに潜伏している気配を強く感じたことや、実際に現物そのものと遭遇した経験も幾度もあります。

■北海道におけるヒグマとの遭遇
ヒグマ 決して山奥ではなく、普段気軽に釣りに出かけるような、近くにまばらに農家があって時々車の往来があるような人里にある河川でさえ、足跡をはじめ川辺の蕗や川に接した畑の作物の食痕など、ヒグマの活動の形跡を見かけることは、最近では特段珍しいことではありません。
 しかし、私の場合には、実際に今までヒグマと近距離でバッタリ遭遇したことも、ましてや襲われかけたことも一度もありません。
 ヒグマは元来、非常に警戒心が強く臆病な動物と言われています。普通は、ヒグマがこちらの存在に気づいた段階で、ヒグマの方から慌てて逃げて行くか、進路を変えて人間から遠ざかっていくことがほとんどです。

 しかし、相手は、その気になれば一撃で人間を殺戮することが出来る能力を持っている野生動物です。いくらこちらがそれなりに警戒し、相応の心構えや経験を有し、適切に・・・人間の身勝手な都合の良い解釈で?・・・対処してきているといっても、常にこちらの思惑通りに行動してくれるという保証は一切ありません。
 ヒグマは「学習する動物」と言われており、通常のヒグマはなるべく人間を避けようとしますが、中には人間は忌避すべき存在と認識できていない個体や、好奇心の強い若熊もいます。学習の度合いには個体差があり、そこが恐ろしいところなのです。

本来、北海道の山野はヒグマの領域です。その領域に立ち入って遊ばせて頂く釣り人には、北海道の自然の生態系の頂点に立つヒグマに最大の敬意を払って行動するという真摯な心構えと、イザという時の適切な対処方法を知ることが必要となります。


 お客様におかれましても、北海道の釣りのフィールドでは次のことを十分に理解し、ヒグマとの不要なトラブルや事故を防止するため、慎重な行動を心がけるようお願いいたします。
■ヒグマと遭遇しないために
1)「ヒグマに人間の存在を知らせてあげること」が遭遇を避ける最も大切なこと

ヒグマ 一番危険なのはお互いに気づかず近距離でバッタリと出会ってしまうことです。この突然の近距離での遭遇さえ回避することが出来れば、ヒグマとの不幸な事故に巻き込まれる確率は格段に低くなるのが現実です。
 解剖学的な所見からは、ヒグマの嗅覚と聴覚は非常に優れていると言われています。犬の嗅覚は犬種や臭いの質にもよるものの、平均的には人間の数100万〜1億倍とされています。しかし、ヒグマは犬の78倍も優れていると言われています。
 風向きによっては5qも離れたところにある鹿の死肉の臭いを察知することもあるようです
 聴覚も人間より優れており、特に通常自然界にはない、金属音等の高い周波数の音には敏感に反応することが知られています。

ある実験によると、静寂な森の中で85m離れた地点でのカメラの微かなシャッター連写音を聞き取れる事が判明しています。また、知り合いのハンターの経験では、120mほど離れたところでライフルを操作する際の「カチッ」という小さな金属音にも反応することもあるそうです。
 逆に視力はやや近視気味で、200m離れた場所で静止している人間を明確に視認できないとの報告もあります。ただ、静態物の認識視力は人間に劣るものの、動態視力的反応は相当鋭いと言われています。
 ヒグマはこの優れた嗅覚と聴覚を最大限に活用して、食料を探し、危険を察知・回避しながら暮らしています。
 スズを身に付け常に金属音を出して行動することは、ある程度の距離をおいて事前に人間の存在を知らせるうえで非常に効果的と言われています。また、物が燃える臭いにも敏感と言われており、喫煙される方にとっては、風向きにもよりますが、定期的にタバコを吸うことも効果があると思われます。
  ただ、学習の度合いが進んでいない若い個体や一部の極端に人慣れした異常なヒグマの場合には、スズの音や人間の出す臭いによって逆に人間に近寄ってくるというケースが稀にあるとも言われています。しかしながら、通常のフィールドでは、やはり突発的・偶発的な近距離での遭遇を避けるためには、スズを身に着けることは相当に効果的と思われます
 
 釣り場では、時々周囲や進行方向に気を配り、より早く熊の出没や潜伏を察知出来るよう慎重に行動して下さい。また、ガイドや同行者の目の届かないところまで単独でドンドン先に行ってしまうことは慎んだほうが賢明です

 特に、進行方向が風上になっている場合や、見通しの悪い場所、川辺まで笹や大きな蕗・イタドリなどが生い茂っているところでは、周囲をよく観察し、声を出したりスズを鳴らしたりして、ヒグマの気配を確認してから行動してください。
 また、もしもヒグマがすぐ近くにいる場合には、その時の風向きや距離によっては、強烈な獣臭がすることがよくあります。(動物園の檻の前のような獣臭の強烈な臭いです)そのような臭いに気づいた際には、慌てずに周囲をよく観察しながらゆっくり後退し、すぐにガイドに知らせその指示に従ってください。
■遭遇をしてもむやみに騒がない
2)万が一ヒグマと遭遇した場合でも決して慌てたり騒いだりしないこと
ヒグマ
 北海道民の中にも「山でヒグマに出会ったら間違いなく襲われて殺されてしまう。。。」 という迷信めいたイメージを強く持っている人がたくさんいるのも実情です。
 確かに、広い北海道の一部の山系には、ある程度の確率で積極的に人を襲うような、攻撃的なDNDを持ったヒグマのグループが棲息していると言われていますし、明治から大正の開拓初期の頃には、家畜や人間が襲われる事件も多く発生したことも事実です。

 しかし、実際には・・・現実的には・・・ヒグマが始めから人間を食料とみなして襲う目的で出てくることは極めて稀です。  

 自分の餌場や食糧・縄張りに近づく相手を威嚇するため、子連れの場合には小熊を守るため、また、学習が進んでいない若熊の場合には好奇心や興味本位から人間に近寄って来ることなども時にはありますが、この時に人間が対応を間違えると本能的に攻撃してくることがあります。
 実際に釣り場でヒグマと遭遇した際には、まずは、決してパニックにならず、冷静にヒグマの動向を観察して下さい
 遭遇時の距離や周囲の状況にもよりますが、原則的には次のような行動をとることが強く推奨されます。

@ パニックになって大声で騒いだり急激で大きな動作をせず、まずは冷静に、静かにヒグマの動向を観察し、その進行方向や風向き、自分の退路の状況等を観察・把握する
  その場から一目散に走って逃げたい気持ちをぐっと堪え、まずは冷静になってください。大声で騒ぎたてたり、いきなり大きな動作をとったりして必要以上にヒグマの注意を引くことやヒグマを刺激することは、決して得策ではありません。まずは人間が落ち着き、ヒグマを興奮させないようにします。
A 決して、ヒグマに背中を見せて走って逃げ出さない
このような行動は自殺行為と言えます。ヒグマは走って逃げる相手を「自分よりも弱い」「獲物になる」と考え?本能的に追ってきて排除行動や攻撃行動に移るという事例が多く報告されています。
B ヒグマの動向を注視しながら、ゆっくりと熊から離れる方向に後退する
ヒグマから目を離さず、静かにゆっくりと後退します。ある程度の距離が離れヒグマが見えなくなったとしても、やはり走らずに、周囲に気を配りながら冷静に少しずつ遠ざかります。退避する際には単独ではなく、皆が一緒にまとまって行動します。この時、釣り具や荷物はその場に放置せず持って後退することが基本ですが、余裕がない時にはその場に置いたままで後退します。

 ほとんどの場合は、このような対処方法をとることにより、やがてヒグマがその場から立ち去って行くのが普通です。
■回避行動の仕方
3)ヒグマが立ち去らない場合には・・・
 たいてい・・・ほとんどの場合には、上記の対処をすると、やがてはヒグマが人間の近くから立ち去って行くのが普通です。
 人間の方を時々見ながらも無関心を装うように、ゆっくり・ゆったりと離れていく場合もありますし、慌てて走って逃げていくヒグマもいます。

 しかし、ごく稀には、人間がそこに居ることを認識しているにもかかわらず、その場を去らないヒグマもいます。  
 
このようなヒグマは、ある程度学習を経ている普通の個体や、通常の状態ではないヒグマである可能性もあり、時には人間に近づいて来て牽制行動や威嚇行動をとったり、場合によっては攻撃行動に移ることも有り得ます。

その理由としては
  1. 自分の進行方向や領域に入り込んだ何かをまだ人間と認識せず、何者かを確かめるために近づいて来る場合や、単に邪魔者を排除しようとする場合
  2. 好奇心や興味本位から人間を「戯れ」(じゃれ付き)の対象としたり、また、理解できない相手に遭遇した「苛立ち」から排除しようとする場合(若熊に多い)
  3. 近くに小熊がいて、それを守るために母熊が人間を排除しようとする場合(子連れの母熊・・・危険!)
  4. 近くにそのヒグマが確保した食糧や餌場があり、不用意に近づいた人間を排除しようとする場合(相当危険!!)
  5. 過去に人間に危害を加えられ「敵」とみなしている場合や(手負い熊)、人間を食糧と認識している場合・・・(かなり危険!!!)

などが考えられています。

 いずれにしても、実際にヒグマと遭遇し、こちらが冷静にゆっくりと後退しているにもかかわらず、ヒグマが立ち去らずに逆に近づいて来るような場面では、近くに小熊が見える時以外には、その理由など考えてもあまり意味はありません。
 自分は過去に一度だけ、こちらを人間だと認識しているにも関わらず徐々に近づいて来るヒグマに出会ったことがありますが、その時は「ありゃっ!?なんだ?こいつは・・・??・・・近寄ってくるよ・・・なんで??」という感じで、恐怖心よりも奇妙な違和感を強く感じました。
 遭遇しお互いに目が合った?時の距離は約40mで、ヒグマをじっと見据えつつ穏やかに声を掛けながらゆっくりと後退し、数分後に50mほど後方にいた他の2名と合流した時点で、ヒグマとの距離は20m前後だったと思います。3人でヒグマと対峙を始めると、ヒグマの方から徐々に離れやがて立ち去りました。
 このヒグマは親離れしたばかりの23歳程度の若い小型の個体で、まだ人間は忌避すべき存在と学習・認識せず、興味本位から近づいてきたものと思われます。
ヒグマ
こちらがゆっくりと後退しているにもかかわらず、ヒグマが立ち去らない場合や少し近づいて来る場合でも、パニックになって騒いだり、決して背中を見せて走って逃げ出してはいけません。

ヒグマから目を離さずに、やはりあくまでもゆっくりと退避します。


4)ヒグマが立ち去らずに、徐々に近づいて来る場合・・・

 一般的には、かなり警戒を要するケースです。しかし、通常は、ヒグマがいきな走って来て距離を詰め、直ちに攻撃行動に移ることはほとんどありません。この段階でもやはり冷静に行動します。
@ なるべく速やかに・・・ゆっくりとした動作で同行者と合流し、一緒に固まって行動します。声が届く距離であれば、ヒグマに穏やかに声を掛けつつ、ゆっくりとヒグマから離れる方向へ後退します。
A それでも明らかに人間がいることを認識しつつ、人間が静かに退避しているにも関わらず、こちらを意識しながらどんどん近づいてくる場合には、近づいて来る時間を稼ぎつつ退避します。帽子や衣服などを置きながら、ヒグマがその衣類等に興味を示しているうちに距離を稼ぎ、道路や民家、車がある方向や最寄りの退渓地点へ向けて退避します。

 この場合、よほどの近距離に林道や民家、車があると確信できる場合は別としても、笹や大きな蕗が茂っている藪や樹木の密度が濃い林の中など、見通しが悪くとっさの行動が制約されるような退避ルートは避けます。少し遠回りになったとしても、ある程度は周囲を見渡すことが出来る、藪や樹木の密度が薄いコースや川沿いの退避コースを選択し、なるべく視線が高く確保できるルートに沿って、常にヒグマの動向を確認しつつ、やや早く歩く程度で落ち着いて退避します。   
 この時に何かに躓いて転倒すると、人間は簡単にパニックになってしまいますので、足元にも十分に注意しながら退避します。
また、一旦放置しヒグマが興味を示した物を後から回収することや、時間を稼ぐために食糧を置くことはご法度です。ヒグマは一度自分の所有物?と認識した物に対する執着心や固執癖が非常に強く、それを回収すると、どこまでも執拗に追ってきて持ち去った者を攻撃してまで取り戻そうとすることがあります。また、人間が食べられる物はヒグマにとっても美味しい?食糧です。  
 人間が食糧を与える者と認識し、人間が持っているその食糧を奪うためにいつまでも追跡してくることや、最悪の場合には攻撃行動に移るということもあり得ます。さらには、その時はうまく退避できたとしても、そのヒグマが「人間は美味しい食糧を持っているもの」と学習し、平気で人間に近づいて来る「危険なヒグマ」を作ってしまう可能性もあります。
 ただし、決して推奨はできませんが、その場、その時に迫った重大で現実的な生命の危機的状況を回避するために、やむなく食糧を置くという選択肢は、状況によっては必ずしも責めることのできないこともあるかと思います。

 また、このような対応をしても、なおも執拗に人間を追って距離を詰めて来るような場合には、「最悪、襲われた場合には、たとえ丸腰でも戦うぞ!」と、そろそろ事前に覚悟を固めておく必要があります。この覚悟と強固な意思決定が予め出来ていないと、その後の局面でヒグマが威嚇行動や威嚇突進行動をとってきた際にいとも簡単に恐怖心に負けてしまい、背中を向けて走って逃げ出し結果的に襲われてしまう確率が非常に高くなると思われます。

5)ヒグマがどんどん近づいて来て退避しきれない場合には・・・

 その理由や原因は別としても、このような時はヒグマがある程度確信的な意図を もって人間に近づいて来ると考えられます。このような場面で逃げ切れないと判断される時には最悪の場合を想定し強気で闘う強固な意志と覚悟を決めるしかありません何度も言いますが、決して背中を見せて走って逃げ出してはいけません

 走って逃げる相手を本能的にその気になって追ってきた場合には、人間の走るスピードでは到底逃げ切れるものではありません

ヒグマ

こちらが冷静にゆっくりと後退しているにも関わらず、ヒグマがどんどん近づいて来て、逃げ切れないと判断した場合でも、その目的が単に「苛立ち」から邪魔者を排除しようとする場合や、「戯れ」の場合には、まだ決定的な事故を防ぐことは可能です。

@ 最寄りの岩や倒木の上に登り自分をなるべく大きく見せ、決してひるまずにヒグマを睨み付け、はじめは穏やかに、除々に強い調子の声で威嚇します。
   ヒグマが近距離に迫った際に、少し高いところに登りヒグマを強気で睨み付け、大声を出しながら一歩前に踏み出した途端に、あるいは、大声で威嚇しながら拳大の石を投げつけたり、木の棒を大きく振り回したら、ヒグマが逃げて行ったという例も報告されています。
 また、小熊は木登りが得意ですが、成獣はあまり木登りが得意ではないようです。ヒグマに執拗に付き纏われた人間が、ある程度の太さの木によじ登り、後ろから徐々に登ってきたヒグマを枝や足で激しく突ついて難を逃れたという事例もあります。
 いずれも、それなりの覚悟を持って強気で対処した結果、ヒグマが攻撃せずに立ち去ったという例です。
 しかし、確実なものはありません。ヒグマの様子を窺いながら、なるべく興奮させないよう、その時の状況に応じて対応するしかありません。
A 持っていれば熊撃退スプレーや鉈、ナイフなどを構え、武器となるものを持参していない時は近場の石や棒きれを手にして強気で戦う決意を固めます。この時、いきなりの突進や攻撃を防ぐために、ヒグマと自分の間にある程度の太さの立木や倒木がある場所にポジションをとるのが理想です。
ヒグマ ヒグマは、人間をその場から排除、または攻撃しようとする場合でも、すぐに・・・いきなり・・・遠くから一目散に走って来て、すかさず攻撃するということはほとんどありません。

そのようなことは極めて稀です。
 実際にヒグマに襲われた人でも、必死に抵抗し、何かの拍子にヒグマに痛い目を負わせたとたんにヒグマがびっくりして?攻撃を止め、多少の怪我は負ったものの、何とか生還したという例が多く報告されています。

 「死んだふり」をすればヒグマは襲わない」というのは全くの迷信で、実際にヒグマに襲われて「死んだふり」をして助かったという実話は、私は今まで聞いたことがありません。
 ただ、背中を見せて走って逃げ出すよりは、ジッと動かずに「死んだふり」をする方がまだ良いのかもしれません?


 ヒグマに襲われながらも生還した例のほとんどは、「死にもの狂いで反撃し、多少の怪我は負ったものの何とか難を逃れた・・・」というケースです。

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